相続税の税務調査
税務調査は、申告納税制度を補完する制度だ。納税者の申告に漏れや不正がないかをチェックする制度だ。また、税務調査は、納税者の同意の上に行われる任意調査だが、実際には拒否できない。
税務調査の実態
税務署では、相続税の申告があったものだけでなく、申告がなかったものについても調査をしている。調査の結果、追加納税が必要なものや新たに申告が必要なものについて、修正申告や期限後申告を促す。納税者が従わない場合には、税務署が一方的に税額を決める更正や決定をすることがある。
提出された相続税申告について、財産の漏れや不正がないかを確認するため、金融機関に残高照会をする。その際、被相続人名義だけでなく配偶者や子などの名義についても調査する。過去に預金が引き出され、そのお金がどこに行ったかも調査される。不明な点は、税理士・相続人に電話で確認し、追加で納付が必要な場合には、修正申告を促す。
また、税務署は、申告がなかったものについても調査している。市区町村役所から入ってくる死亡情報から相続税申告が必要そうな事案に相続税申告書を送り、申告がないものについては、調査を行い、申告が必要なものについては、電話で期限後申告を促す。
臨宅調査
特に、課税価格が3億円以上や金融資産が1億円以上の事案については、被相続人の自宅で調査(臨宅調査)がある確率が高い。調査に行くかどうかは、課税価格や資産内容、被相続人の収入、家族構成、税務署の内部資料、預金調査などを基に判断している。
さらに、課税価格が20億円を超える規模の相続税申告については、所轄税務署ではなく、税務署の上部組織である国税局が直接調査を行うことがある。その際には、当然、所轄税務署の調査よりも厳しい調査が行われる。
調査時期
臨宅調査は、通常、申告した年又は翌年の秋に行われる。これは、税務署側の年間スケジュールによる。年の前半は、確定申告、7月に異動、8月に内部調査を行い、8月後半から実際に被相続人の自宅に行き調査を行う。そして、年末までに決着をつける。
調査対象
調査対象は、主に現金・預貯金などの金融資産だ。土地・建物などの不動産については、名寄せされているため漏れは少ない。しかし、現金・預貯金は、名義を簡単に変えられ、故意に隠されることもあるためだ。従って、調査官は、本人名義だけでなく、家族名義の預貯金も過去5年に遡って調べ上げる。
自宅においては、預金通帳などの現物確認のほか電話帳、香典帳に至るまで調べ上げ、色々な話を聞き出す。そして、金庫・貴重品入れだけでなくタンスの引き出しまでチェックする。また、貸金庫があれば同行する。その結果、訪問前の疑問点の確認、申告になかった財産・調査対象を探る。
近年、海外資産の調査にも力を入れている。
ペナルティ
申告後、税務調査で修正申告になった場合
増額分の相続税に対して、過少申告加算税10%※+延滞税(年4.3%で最長1年分)
※重加算税35%
対策
安易な財産隠しはかえって傷を深くする。仮装・隠ぺいした財産には、配偶者の税額軽減が適用できない他、単なる申告漏れでも、延滞税、加算税など無駄な税金を納めなければならなくなる事を頭に入れておく事が大切。
相続税の申告にあたっては経験豊富な税理士に依頼した方がいいでしょう。