相続税の納付方法
相続税は金銭一時納付が原則
相続税は、申告期限までに金銭で一時に納付しなければならない。納期限までに金銭で一時に納付することが困難な場合には、その困難な金額※を限度として、一定の要件のもとで、年賦延納(年1回に1年分まとめて納付)が認められている。
※納付困難な金額は、相続で取得した財産だけでなく、相続人固有の資産も含めて考慮される。
さらに、延納によっても金銭で納付することが困難な場合は、その延納でも納付困難な金額※を限度として、一定の要件のもとで、物納(相続財産で納付)が認められている。
※相続した財産からの収入だけでなく、相続人固有の収入も含めて考慮される
事例
長男の納税額が1億円(不動産等の割合75%以上=最長延納期間20年)
相続財産から金銭・上場株式等を3,000万円相続
自分の預金その他の金融資産が1,000万円
年200万円の納付資力がある
1億円-(3,000万円+1,000万円)=6,000万円(納付困難な金額=延納許可限度額)
6,000-年200万円×20年=2,000万円(延納でも納付困難な金額=物納許可限度額)
∴金銭一時納付で4,000万円、延納で4,000万円 物納で2,000万円納付
相続財産を売却した場合の譲渡税の取得費の特例
相続財産を売却し、譲渡益(売却-取得費※-譲渡費用)があるときは、譲渡税がかかる。土地等の譲渡の場合には、譲渡益に対して20%の譲渡税(長期、所得税・住民税合算)がかかる。ただし、相続税が課されて、相続税の申告期限から3年以内に相続財産を売却した場合には、譲渡税の取得費の特例がある。この特例は、課された相続税額のうち一定金額を譲渡資産の取得費に加算することができるというものだ。これにより、ざっくりとだが相続税を納める程度の売却なら譲渡税がかからない。
※死亡した人の取得時期・取得費を引継ぐ。
取得費に加算する相続税の額
取得費に加算する相続税の額は、取得者毎に次の算式により計算した金額になる。
<算式>
相続税額×土地等の価額の合計額/相続税の課税価格(債務控除前)=取得費に加算する相続税額
※ただし、既にこの特例を適用して取得費に加算された相続税額がある場合には、その金額を控除した額となる。
延納
納付すべき相続税が10万円を超え、かつ金銭で納付することが困難な場合には、担保提供を条件として相続税の元金均等年金払いよる延納を行うことができる。
下記には、不動産等※の割合に応じた最長の延納期間と利子税の割合をまとめた。
※不動産等とは下記の財産をいう。
- 不動産および不動産の上に存する権利
- 立木
- 事業用の減価償却資産
- 特定の同族会社※の株式又は出資
※相続人その他特別関係者が50%超保有
延納期間と利子税
区分 | 最長延納期間 | 原則の利子税(年率) | 特例割合※ | |
---|---|---|---|---|
不動産等の割合が75%以上の場合 | 不動産等に対応する税額 | 20年 | 3.6% | 2.1% |
動産等に対応する税額 | 10年 | 5.4% | 3.1% | |
不動産等の割合が50%以上75%未満の場合 | 不動産等に対応する税額 | 15年 | 3.6% | 2.1% |
動産等に対応する税額 | 10年 | 5.4% | 3.1% | |
不動産等の割合が50%未満の場合 | 立木に対応する税額 | 5年 | 4.8% | 2.8% |
立木以外の財産に対応する税額 | 6.0% | 3.5% |
※日本銀行が定める基準割引率が0.3%の場合
3.6%×(4%+0.3%)/7.3%=2.1%(小数点2以下切捨)
例えば、相続税の課税価格(債務控除前)が2億円で不動産等の価額が1.5億円の場合には、「不動産等の割合が75%以上」になるため、不動産等に対応する税額は、最長20年で返済し、利子税は2.1%(特例割合)になる。不動産等に対する税額が2,000万円なら、毎年100万円の元金返済と利子税を納付する。
物納
相続税を納めることが延納によっても困難な場合は、一定の条件のもとに相続財産そのもので国に納付できる。但し、物納財産は国が売却をするため厳しく制限されている。物納には譲渡税はかからない(超過物納を除く)。
物納に充てることができる財産とその順位
第1順位・・・国債及び地方債、不動産及び船舶
第2順位・・・社債・株式及び有価証券
第3順位・・・動産
※特別な事情がある場合を除き第1順位より順に選択する
未分割の場合
相続税の申告期限までに、遺産分割が決まらない場合には、法定相続分で相続したものとして申告・納税することになる。その際、小規模宅地等の特例や配偶者軽減が使えないため、遺産分割が決まっている場合に比べて余分に相続税を納付することになる(しかし、相続税の申告期限から3年以内に遺産分割が決まれば、余分に納付した相続税は還付される)。
相続税の納付事情
延納・物納の納付困難事由の要件が厳しくなったため、金銭一時納付が困難な場合には、銀行から借入をして納付していることが多い。その返済が大変な場合には、相続した土地を売却して返済していいる。