相続時精算課税贈与税
概要
相続時精算課税とは、65歳以上の親から20歳以上の子※への贈与について、贈与者ごとに通算で2,500万円(特別控除額)までなら贈与税がかからない制度である。
※既に子が亡くなっている場合には20歳以上の孫を含む
しかし、贈与者が死亡したときに、遺産とこの課税制度で贈与を受けた財産(相続時精算課税適用財産)を加えて相続税の計算をする。相続時に贈与を受けた財産と遺産を精算する制度である(相続時精算課税制度)。相続税と贈与税の一体化を図るものだ。
遺産+相続時精算課税適用財産=相続税を計算
目的
この課税制度の目的は、経済対策だ。高齢者の資産をお金がかかる子の世代に円滑に引渡すことにより、子がお金を使い経済を活性化させるというものだ。通常、年間110万円を超える贈与には贈与税(暦年課税)がかかる。この暦年課税は、相続税から逃げられないようにするための制度だが、そもそも相続税がかからない人には逃げられないようにする意味がない。そこで、きちんと申告をすれば、高額な贈与を受けても贈与税がかからない制度を作った。それが相続時精算課税だ。従って、相続時精算課税は相続税がかからない人のための制度である。
事例
父からの贈与について相続時精算課税の適用を受ける。
<平成20年> 1,000万円の贈与を受ける
受贈額1,000万円<=特別控除2,500万円
贈与税はかからないが、贈与税の申告期間(平成22年2月1日~同年3月15日)内に贈与税の申告と「相続時精算課税選択届出書」を提出。
<平成21年> 100万円の贈与を受ける
受贈額100万円<=特別控除の残りの枠(2,500万円-1,000万円)
納税がなくても贈与税の申告必要
<平成22年> 2,000万円の贈与を受ける
受贈額2,000万円>特別控除の残りの枠(2,500万円-1,100万円)
(2,000万円-(2,500万円-1,100万円))×20%=120万円(贈与税)
贈与税120万円を納付
<平成24年> 父死亡
遺産4,000万円+受贈額3,100万円<=相続税の基礎控除8,000万円(法定相続人3人の場合)
∴相続税の申告義務はないが相続税の申告をすると贈与税120万円は還付になる
注意点
相続時精算課税の注意点は、父又は母ごとにこの制度を選択できるが、一度選択すると、暦年課税に戻れなくなること。例えば、父からの贈与について相続時精算課税の適用を受けた場合には、父からの贈与については、暦年課税に戻れなくなる。一方、母からの贈与については、暦年課税のまま。
要件
相続時精算課税の適用を受けるための要件は次の2つ。
- 65歳以上の親から20歳以上の子(子が亡くなっている場合には20歳以上の孫を含む)へ贈与であること
- 最初にこの制度の適用を受けようとする贈与があった年の翌年2月1日から3月15日までの間(贈与税の申告期間)に贈与税の申告書と一緒に「相続時精算課税選択届出書」を提出しなければならない。
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