相続税の非課税財産
相続税では原則として、相続などにより取得した財産のすべてが課税対象になる。しかし、その取得した財産の中には財産の性質、社会政策的な見地、国民感情などから課税しない方がいいものもある。そこで、これらの財産については「非課税財産」として限定列挙されている。その非課税財産のうち、一般の人に関係がありそうなもの列挙した。
1.墓地や仏壇仏具
墓地や墓石、仏壇、仏具、その他神を祭る道具などで日常礼拝に使っているものは、非課税財産。ただし、骨董的価値があるなど投資の対象となるものについては、相続税がかかる。
なお、自宅の庭にあるお稲荷さんなどの敷地も非課税になる。
2.死亡保険金
相続により取得したとみなされる死亡保険金のうち、下記の算式で計算した金額については、非課税財産になる。
<算式>500万円×法定相続人の数=非課税限度額(非課税枠)
民主党時代の税制改正では、法定相続人の数について、「同居している人に限定される」という項目があった。しかし、平成25年度の税制改正には入っていないため改正されない。
相続税がかかるかどうかの判断時
相続税がかかるかどうかの判定も、この非課税を考慮した後の金額で判定する。
事例
法定相続人3人で死亡保険金2000万円、その他財産7000万円の場合
500万円(※1)+7,000万円=7,500万円 <=8,000万円(相続税の基礎控除額(※2))
∴相続税の申告義務なし
(※1)2,000万円(死亡保険金)-1,500万円(非課税金額:500万円×3人)=500万円
(※2)5,000万円+1,000万円×3人(法定相続人の数)=8,000万円
非課税枠の使い方
保険金が非課税限度額を超える場合の非課税額の使い方は、非課税枠を取得金額に応じて按分する。適用を受ける人を選択できるわけではない。
事例
生命保険金の受取額(配偶者が2,000万円 子Aが1,000万円)、非課税限度額1,500万円の場合
配偶者:非課税限度額1,500万円×2,000万円/3,000万円=1,000万円(配偶者の非課税限度額)
子A:1,500万円×1,000万円/3,000万円=500万円(子の非課税限度額)
養子の数の算入制限
生命保険金と下記死亡退職金等の非課税限度額を計算する際の法定相続人の数については、被相続人に養子がある場合には、下記の養子の数の算入制限がある。
・実子がある場合………1人
・実子がない場合………2人
これは、相続税の基礎控除を計算するときと同じだ。法定相続人の数を養子によって増やされると、相続税を安くされてしまうためだ。
3.死亡退職金手当金等
相続により取得したものとみなされる死亡退職手当金等のうち、下記の算式で計算した金額については、非課税財産になる。
<算式>500万円×法定相続人の数=非課税限度額(非課税枠)
相続税がかかるかどうかの判定についても、こちらも死亡保険金と同様に、非課税金額を控除した後の金額で計算する。また、非課税限度額の按分も生命保険金と同様。
不動産賃貸事業を営む人が小規模企業共済に加入していた場合には、その人が死亡したときに同共済から相続人に支払われる金額は、この死亡退職手当金等になる。
4.国等に寄付をした財産
相続税の申告期限までに、相続や遺贈によって取得した財産で国又は地方公共団体や公益を目的とする事業を行う特定の法人に寄付したものについては、非課税財産になる。
相続した財産を「学校」や「ユニセフ」「あしなが育英会」などの法人等に寄付した場合には、その寄付をした財産は、非課税財産になる。規模の大きいところでは、公園として利用していた森を地元自治体に寄付をした人もいる。これも非課税財産になる。